昨今の採用では、日本人応募者を目利きすることにも自信を失いつつありますが、もとより言葉や文化の異なるベトナム人材の採用では、筆者は数限りなく失敗を繰り返しています。

採用面接は互いを見極める「お見合い」の場などと言われますが、採用されてから就職するかを考えるベトナム人材はなかなか本性を現しません。

 

□ 良い人を探す前に、問題児を採用しない

弊社への研修のご相談時にもよく耳にする課題指摘ですが、採用後に仕事にも慣れてきたベトナム人材の問題行動には以下のようなものがあげられます。

  • 自分のミスを認められない。ミスを指摘すると言い訳が続き、ついには逆切れする。
  • 問題が生じると他部署や他人のせいにする。自身では動かず、「xxさんに依頼して下さい」と仕事を振り返す。
  • 他部署や他人の仕事に関心を示さず、自分の仕事が終わるとさっさと帰る。部下に仕事を依頼して自分は早々に帰宅する。
  • 会議など、自身の主張を繰り返すだけで、他参加者の意見に耳を貸さない。決まったことでも自分の意見と異なると従わない。
  • 「私用で休みます」と、理由を明かさない。プライベートへの質問に極端な抵抗を示す。

こうした方が職場にいると、雰囲気が殺伐とし、個人主義・事なかれ主義がはびこってしまいます。

また、もとよりベトナムではこうした性格の人は珍しくもないため、他のベトナム人従業員は不満ももらしませんが、関わりあわないようにと互いに疎遠になっていきます。

問題児のベトナム人材も教育を通じて少しずつ変わっていくケースも見られます。しかしながら、手間も時間も取られますので、採用しないことが第一です。即戦力を探すことは相当に難しいベトナムですが、普通の人であれば育てれば育ちます。まずは、採用段階で採用すべきでない人は採用しないことが大切と思います。

 

□ ベトナム人材の採用はデータで勝負

人材紹介者が先記のような問題児を紹介前に選別してくれることを期待しますが、実態は猫をかぶった求職者と簡単な面接を行うだけのようですので、自衛手段を考えざるを得ません。

現場作業者の採用では、「名前を書く欄を指示したにも関わらず、名前を違う場所に書く」など、人の指示を聞けない候補者がいるのも事実です。また、大卒者の面接でも「自分の性格を説明してください」という問いに十分に応えられる人はほとんどおらず、本人自身が自分を理解していない状況が伺えます。直近行った面接では、候補者が映画好きだというので、「自分の好きな作品を上げて、その作品から何を感じたかを説明してください」と問うたところ、「最後に主人公の女性が幸せになれて良かった」というので、「何を感じたのか、聞いているのです」と問いただしたところ、「もう私の意見は言いました!」と切れてしまいました。

この面接では候補者が切れた段階で、概ね性格が知れたのでよかったのですが、自分の性格を説明できないことが一般的なベトナムで、面接で候補者の人となりを理解することは相当に困難です。

そこで弊社では、面接時の印象などは補足情報にとどめ、むしろテストなどを通じたデータを主体に候補者を選抜しています。

最近では日本で実施しているような採用テストがベトナム語で実施できるようになってきています。費用が気になる方はインターネットでも簡易的なテストは入手可能ですので、最低以下の視点からのデータを入手し、採用判断に活用されてはと思います。

  • 知能テスト

いわゆるIQテストですが、概ね頭の回転の良さが図れます。弊社では日本人の候補者の方にも同じテストを受けていただいていますが、ベトナム人の方が平均して得点は高く、やはり頭が良いんだなあと関心してしまいます。日越人を問わず、極端に点の低い方は避けるべきでしょう。

現場作業者向けには、算数や国語などのテストを実施している会社は多くあります。

  • 心理テスト

多種のテストがありますので、どういったテストを実施するか悩まれることと思います。

弊社では試験的にパーソナリティ障害の簡易診断を実施しています。傾向が見られるだけで合否はありませんが、他者への懐疑心や自己愛の程度、依存性の強さなどの傾向が測れます。平均と比較して極端な数値が出る際には注意が必要です。

現場作業者向けには、面接や試験を待つ間の姿勢・態度などを観察して選抜されている会社もあります。